林 葵衣 個展
くばせのつらなり

HAYASHI Aoi solo exhibition
Shape of Dialogue

2025年10月3日(金)から12日(日)
12:00から18:00 月曜日休み


KUNST ARZT では、3年ぶり4度目となる
林葵衣の個展を開催します。
林葵衣は、口紅の痕跡絵画や
口腔内オブジェを通して、
言葉を視覚化するアーティストです。
本展では、口内で硬化させた
ポリエチレン樹脂製オブジェに
「時間」を与える試みです。
口腔内オブジェをワイヤーなどでつなぐことで、
その発音された言葉と言葉の間の時間、
無言の時間など、より実際の発話のタイミングを
視覚化することが可能となり、
そのワイヤーが複数になることで、
対話を再現することも構想しています。
(KUNST ARZT 岡本光博)



展覧会コンセプト

目くばせ、気くばせなどの言葉に使用される
「くばせ」とは元来「くわせ」「くはす/食わす」
から変化した言葉である。
目の前の相手と対話するため体内から
言葉を引き出そうとする時、言いよどんだり、
つかえたり、途切れたり言い間違えるのは、
自分が伝えたい言葉を対話相手が
食べやすいよう形を整えるうちに溢れてしまう
身体の身振りなのかもしれない。
選びきれない言葉、不恰好な声、整
わない呼吸が一本の連なりとして
口から吐き出された様子を提示する。



PRESS RELEASE



HAYASHI Aoi (b.1988, Kyoto pref, lives and works in Kyoto)
is an artist who focuses on the movement of the lips
and the production of sound when uttering words.
She earned her MA at Kyoto University of the Arts.



作家による解説

本展では、口から発せられる言葉や
声を視覚化する作品を展示しています。
タイトルに名付けた「くばせのつらなり」のくばせとは、
平安時代に「目をくはす〔食わせる〕」という言い方がみられ、
これが「目で合図して知らせる」ことだと
考えられていると知ったことから来ています。
相手に自分の言葉を食べさせること。
これは、1人で食べる適当な食事のような、
または標本のような完結した独り言とは異なります。
他者と対話することは、身構えたり、姿勢を丁寧にしたり、
言葉を整えながら発したとしても、なまなましく、整わず、
どこか不恰好になってしまうものだと考えています。
その姿勢や、声のねじれ、ひずみ、無言の間を
造形化したくてこのような作品を制作しています。
会場に展示されている立体作品は、
温めると柔らかくなり冷やすと固まる
ポリエチレン樹脂を使用しています。
この樹脂を自身の口の中に入れ、
一音節や単語などの言葉を発音し、口中の型を取り、
吐き出したものを言葉の彫刻としています。
樹脂と木材やアルミなどの異素材を組み合わせることで
言いよどみや言葉に詰まる様子を表現する
《Phonation Piece -Distortion-》シリーズ、
あくまでも家族の何気ない会話ですが、
仏師である父と摩利支天尊と呼ばれる
仏像について対話している様子を録音し、
発話内容を1人で言い直し、テグスで吊る事により
会話の時間軸、間を同時に再現する
《Phonation Piece -DIALOGUE-》、
しゃがみ、あおぎみ、とぶ、という体の動作と
制作時の造形や形態、空間での展示方法をリンクさせた
《Phonation Piece -SHAGAMI AOGIMI TOBU-(Distortion)》、
樹脂の両サイドから向かい合うように発声し
型取りを行った《Phonation Piece -FURERU-》、
言葉遊びのしりとりは最後と最初が同じであり、
造形として接続が容易で、単語を積み上げやすいことから
着想した《Phonation Piece -SIRITORI-》を展示しています。
樹脂の色彩は、熱を加え柔らかくする際に、
透明色と色付きの樹脂を同時に混ぜ造形しています。
色付けをすることで発話する人物や、
単語ごとの見分けを行うことができ、
かつ彫刻内部の造形が見えやすくなります。
意味をなさない言い間違い、
1分にも満たないささやかな対話の時間や、
他愛ない言葉遊びのしりとりをモチーフとすることは、
自分が暮らす様々な外部環境の影響を受けたうえで、
尚且つ発される、自分自身を発信源とする
個人的な声であることを何よりも重視しているからです。



DM Design:Kenta Shibano

Phonation piece - き/Ki -
2022
ポリエチレン樹脂、木箱
117×155×45mm (BOX)




Phonation piece - いき/Iki -
2022
ポリエチレン樹脂、ライトボックス
105×70×30mm (body)




Phonation piece - internal -
2022
ポリエチレン樹脂、ライトボックス
164×70×45mm




Phonation piece - syllabary -
2022
ポリエチレン樹脂、ライトボックス
1530×660mm



以上、
個展 「息骨に触れる」(2022)より
Photo by Yuki Moriya






京都新聞 2022年4月30日
高嶋慈さん「林葵衣」展評



アーティスト・ステートメント

身体は心拍の影響、呼吸による喉と唇のふるえ、
記憶の歪みなどから自分の意図通り完璧には動かせない。
これまで反復によるずれ、色彩の残像、音
声の保存をテーマにした作品を制作してきた。
自分のものではないようにもどかしく思う見えない
身体のふるまいと対話し、目に見える形を与え、提示している。



以上、
個展 「詩の復唱」(2019)より
Photo by Yuki Moriya



アーティスト・ステートメント

身体は心拍の影響、呼吸による喉と唇のふるえ、
記憶の歪みなどから自分の意図通り完璧には動かせない。
これまで反復によるずれ、色彩の残像、
音声の保存をテーマにした作品を制作してきた。
自分のものではないようにもどかしく思う
見えない身体のふるまいと対話し、
目に見える形を与え、提示している。

Artist statement

A body is not controllable by one’s intentions
because of ;heartbeat, throat and lips vibrated
by breathing, and warped memories.
The divergence in repetition, the afterimages of colors,
and voice preservation,
have been my main theme on artworks.
Having conversations with body behaviors,
as if it was someone else’s,
gives visible shapes and a clear representation.




I was here
2017
木枠、オブラート
410×318mm

以上、
個展 「声の痕跡」(2017)より



経歴

1988 京都府出身
2011 京都造形芸術大学 情報デザイン学科
映像メディアコース 卒業
2013 京都造形芸術大学 修士課程 修了

主な個展
2025「しゃがみあおぎみとぶ」 豊中市立市民ギャラリー
2023「有り体を積む」 A-Lab 兵庫
2022「息骨に触れる」KUNST ARZT京都
2020「息差しの型取り」+2・大阪
2020「一振りの音」+2
2020「遊動躰」Gallery PARC・京都
2019「詩の復唱」KUNST ARZT ・ 京都
2019「対話の時間」黄金4422bld・ 愛知
2018「しつらえ」AWOMB・京都
2017「声の痕跡」 KUNSTARZT
2016「水の発音」 アートスペース虹・京都
2014「Public Score」 つくるビル・京都 
2013「OverLay」 gallery near・京都
2011「RE 」 C.A.P. STUDIO Y3・神戸
2009「カラダカラニジムコエ」 Galleryはねうさぎ
2008「メヲアケテミルユメ」 Galleryはねうさぎ

主なグループ展
2025「桜を見る会」 eitoeiko 東京
2024「白髪一雄の好奇心 林葵衣+
尼崎市総合文化センター
2023「passage」 +1art
2023「星を見つめる人」 GALLERY HEPTAGON 京都
2022「NEW INTIMACIES」 Gallery PARC
2022「てんかいするメソッド」 成安造形大学
2021「m@p - meet @ post -」Gallery PARC・京都
2021「10年後〜Ten years after 〜」+1art・大阪
2021「CON・CERT walking from +1art to +2」
1art・+2
2021「phono/graph」岡崎蔦屋書店・京都
2021「文字模似言葉」
ボーダレスアートミュージアムNO-MA・滋賀
2021「2020年度第4期常設展 画家の痕跡」
高松市美術館・香川
2020「チャリティ・オークション展」+1art・大阪 
2020「やわらかい希望」+1art・大阪
2020「m@p - meet @ post -」Gallery PARC・京都
2019「チャリティ・オークション展」+1art・大阪 
2019「第六回アラタパンダン展」
クリエイティブセンター大阪 名村造船所跡地・大阪
2019「京都府新鋭選抜展」京都文化博物館
2018「VOCA展」上野の森美術館
2018「第五回アラタパンダン展」名村造船所跡地
2017「アート/メディア - 四次元の読書」 
国立国際美術館
2017「非在の庭 最終章」アートスペース虹

舞台美術
2018「文字移植」こまばアゴラ劇場
2017「ディクテ」アトリエ劇研
2018「文字移植」アトリエ劇研・ぽんプラザホール

受賞歴
2015「芦屋市展」芦屋市立美術博物館/吉原賞




京都新聞 2017年7月15日 

平田剛志さんによる展評









わきじ/Both sides
2019
パネル・口紅
273×220mm(F3号)
¥ 30,000

time of dialog 電燈発電所
2017
キャンバス、口紅
333×190mm
¥40,000

noise -5/22-
2017
キャンバスに口紅
1000×1000mm
¥150,000

time lag
2017
キャンバスに口紅
450×1117mm
¥ 100.000



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