・13:00の時点から犯人工藤健志さん(青森県立美術館準備室学芸員)はワークショップ会場にて、顔を伏せてやや後ろよりの座席に着席。受付名簿には予約した人々の印刷された名前の下の欄に当日突然参加した事を意味する手書きの「岡部あかみ」のサイン。工藤さんいわく「ミス・ポンピドゥー」から取ったとのこと。このサインで参加者の中には「怪しい」と感じた者も。

・13:20から京都市美術館学芸員中谷至宏さん(今回のワークショップ担当)の説明の後、参加者一人ずつ自己紹介。次に約20分ほど、スライドを使っての過去の作品紹介。
自己紹介の際、工藤さんは自己紹介を許否。他の参加者に怪しい度を越され焦っていたとのこと。ここでのスライドプレゼンは少しでも犯人と参加者がある一定時間一緒に過ごしてもらう為。

・13:45から館内の裏口から中谷さんが鍵を開け、コレクション展会場に入る。(この裏口を使って館内に入るというところが、今回のポイントの一つである。)
参加者は中谷さんに引率され、主要作品の前で作品解説。工藤さんはその説明の聞こえる範囲に入ろうとせず、絵画の裏を覗きこんだり、監視カメラを気にしたり(実は煙探知機)、挙動不審者に徹する。いつの間にか館内から消える。・14:00から会場に戻り、「現代美術邪道列伝」という題の作家紹介。Maurizio CattelanRoman SignerJulian OpieRon Mueckと紹介していく後ろで、適度な時間(犯罪成立から通報をシュミレートby中谷さん)を見計って、中谷さんが幾度となく講義を中断させ、岡本に耳打ちして立ち去ったり、出席名簿をとったりという行為を繰り返す。後藤結美子さん(市美学芸)、白岩菜穂子さん(市美総務)は会場の後方で慌てふためく演技(これで信じた参加者も)。
ついにB5の紙とかき集めてきたような不揃いのペンを持って中谷さんが再登場し、講義を止める。川端署からの要請で時間が経過して記憶が薄れる前に、どんな手がかりでも良いから人相書を描いてほしいと参加者に呼びかける。薄っすらと額に汗を光らせ、息が切れている迫真の演技(100mほど手前から走ったという)に圧倒されつつ、岡本から中谷さんへ「参加者が事情聴取で警察へ出頭という事態にはならないように」と念を押す。

・14:30から15分ほど、人相書作成。ここで、「あの人怪しかったんですよねー」といった発言があれば、ぐっと信憑性が増すと思い、前日まで、その演技を依頼しようか迷っていた中山和也氏(CCA出のアーチスト、精華大講師)が、「あの人絵画の裏を覗き込んだりして、金具を見てました。」や「有名なキュレイターの名前を文字っていたので怪しいと思いました。」などといった模範発言の嵐に、岡本は心の中での大爆笑を殺すのに必死。あまりにリアルになり過ぎ、参加費千円も出し、このハプニングに同情して、一生懸命情報を思い出してくれる友人の作家達を見ていると逆切れが恐くなってくる。
・14:50ほどで、梱包された絵画を小脇に抱えた工藤さんが中谷さんと現れる。一同唖然といった状態になる。ドッキリカメラの看板にすべきであった。
・それぞれの人相書を検証していく。アーチストが多かった為だろうか、メガネや服装などのみならず顔を書いている人が何人もいる。年齢をほぼ当てた人もいる。二枚目学芸員工藤さんには失礼な情報もあったが、これだけの情報が蓄積されると犯人確定作業は容易である。何も描かず白紙であった週刊金曜日の編集者山中登志子さんの「私は書きません」という発言はポリシーが一貫していて印象に残る。後ほど、その人相書を工藤さんの写真と並ぶ位置に貼り、捜査協力のお礼の意味をこめて美術館の印を押し、おみやげに。

・15:00から「アートにできること、できないこと」に入る。「買ってはいけない」のブルーレットの記事を配布(その記事を書いたのは山中さん)。
昨年六甲アイランド現代アート野外展において岡本は「おくだけ」というタイトルで、ブルーレットおくだけを69個設置した。その会場は海水が入ってくるように設計されており、勿論ブルーレットはその度に海水を青く染める。それを見た釣り人は「公害である」と警察へ通報。その企画責任者であるアーチストの宮崎みよしさんの展覧会説明とその時点での岡本に対する要望を出される。
アーチストは通報などの起こった問題に対処すべきか、それとも無視して作品だけにメッセージを込めるかといった論点になる。現在の私は条件付で対処する立場であることを再認識する。この論点はワークショップといったインタラクティブな活動が作家に求められる昨今、もう少しにつめても良い問題であると思われる。

工藤さんによる岡本の青森でのプロジェクト紹介(裁判所作品展示拒否の件、無印良品展示拒否の件など)、中谷さんからの質疑応答の後、過去封印されたビデオ作品の上映で終了。
各自サイン入りブルーレット作品「おくだけ」を渡され、各自の判断の元に市美の池に設置してもよいという条件のもと、配布。
16:30終了。

この原案「ポリス・ドローイング」は1971年にアメリカのロスでJohn Baldessariによって行なわれた行為です。(友人のデッサンの授業に、友人を待つフリをして、その授業の行なわれる教室に10分ほど滞在し、立ち去った後、人相書家と友人の先生があらわれ、人相書を作成するというもの。)

2001年12月8日 京都市美術館において、ワークショップを行ないました。
以下時間軸に沿って経緯を紹介します

岡本光博 ワークショップ 2001
心の地図 ポリス・ドローイング