「CAFE coffee break」展 パンフレットより 石橋 綾 (Fragments Office)
岡本光博の「coffee break」は、2つのパフォーマンスを収録したNo.1とNo.2で構成される、いたってミニマルな映像作品だ。
No.1では、ストーブの上に置かれた缶コーヒーがじわじわと熱せられ、爆発するまでが淡々と映し出されてゆく。
しかし、仮に自分の周りの人間が不意にこのようなあからさまなイタズラを始めたとしても、危ないと察知する人が何人いるだろう?
平穏に見える日常生活のなかで、あまりにも鈍感になっているこのような”危険性”について、
岡本はひとときの休息に使われる”コーヒーブレイク”という言葉を
コーヒーがブレイク(自己破壊)するというジョークにすり替えてそれを実践してみせるのだ。
缶コーヒーを電子レンジにいれ、スタートボタンを押してから缶コーヒーが電子レンジごと壊れるまでを撮ったNo.2には、
日常では目にすることができない電磁波が、美しく火花として視覚化されている。
電子レンジの四角いフレーム内を火花が激しく飛び交う様は、まるで抽象絵画を観ているようだ。
目の前の現象は間違いなく危険であり、身体や周囲の状況に被害をもたらしかねないにもかかわらず。
この光景に魅了されるのは何故なのだろうか?混乱する思考をよそに映像は進む。
そして、この光景を見ながら、思考はより過激にエスカレートし、
私たちはどこかですでに爆発という悲惨な結末を妄想したりはしないだろうか。
単調な「coffee break」の映像は、危険性に対する鈍感さを露わにすると同時に、一方で、より危険な、
より過激なものに惹かれてゆく私たちの矛盾性を焙り出すのだ。
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