中桐 聡美 個展
NAKAGIRI Satomi solo exhibition

imitate a real

2024年4月30日(火)から5月5日(日) 
12:00から18:00


KUNST ARZT では、昨年に引き続き
2度目となる、中桐聡美の個展を開催します。
中桐聡美は、慣れ親しんだイメージを
シルクスクリーンで複数枚刷り、
カッティング、ステイニングというプロセスを通して、
「移ろい」を表現するアーティストです。
前回の個展では、瀬戸内海の海をモチーフに、
光や水しぶきを生み出すことで、
「移ろい」を引き出しました。
本展では、祖母の家に20年以上存在する
造花をモチーフに、闇や陰りを生み出すことで、
造花にはありえない「移ろい」を
引き出す構想です。
(KUNST ARZT 岡本光博)



展覧会コンセプト

本展では、祖母の家にある仏壇や
神棚、食卓、トイレなど
家の様々な場所に20年以上置いてある
造花の写真を元に作品を展開する。
本来ならば数日の間に枯れてしまう
生花のイミテーションとして、
造花は家の各所に彩りとして飾られている。
それらは、家に住む人、生活の様子が
どれだけ変化しても、「花」そのものの
年月の経過を感じさせない。
長年使用している家具や物に感じる愛着とは違った、
時間の経過とともに湧く違和感や不気味さを表現する。


PRESS RELEASE



NAKAGIRI Satomi (b.1995, lives and works
in Okayama pref) is an artist who scratches,
colors, and brings out "transitions"
in single silkscreened images of the sea.
She earned her master's degree
in a printing course at Kyoto city University of the Arts.




個展「cleave the water」(2023)展示風景
photo by Kaori Yamane



世界の縫合 - 中桐聡美「水を切って」
安井海洋

中桐聡美は、自らが撮影した瀬戸内海の写真を
スクリーン印刷で紙に転写する。
水色の一版で同一の図像を同じサイズの紙に何枚も刷って、
刃を束ねたカッターナイフで傷をつける。
複製された写真が傷によって一点ずつ異なるイメージを見せる。
 スクリーン印刷における写真製版では、単色で印刷する場合、
グラフィック・ソフトウェアでデジタル写真のピクセルを白と黒
(本展の作品の場合は水色か青)に置き換える。
つまりインクの乗る部分と乗らない部分のオン・オフだけで
イメージを形成するのである。
単色による写真製版の技術が発明されたのは19世紀末だから、
現代のヒトの眼は密集する点を奥行のある空間に錯覚することに
慣れきっているといえよう。
こうした認知の枠組みは、ライプニッツが1714年に執筆した
『モナドロジー』を想起させもする。
 だが、ヒトの眼が構成単位としての粒を見出した瞬間、
そのような写真のイリュージョンは瓦解する。
銅版や木版といった他の印刷技法は切れ目のない線と面からなるが、
スクリーン印刷の場合では細かなインクの粒を
配列することでイメージを形成する。
本展の作品は、製版時に線数をあえて
小さく設定することで図像を粗くし、
刷の物質性を前景化しているから、
そこに粒があると観者が認識するのは容易である。
カメラが捉えたひとつづきだったはずの世界は、
製版を経ることで微小な単位に分裂してしまう。
 しかし、その上から傷を刻むことで、
中桐は分裂した分裂を縫い合わせる。
本来、「傷」は対象が分割されたさまを指す言葉だが、
これらの作品においては粒をつなぐものに反転する。
さらに彼女は傷にインクを垂らして滲ませることで、
それらの境界をぼかしている。
インクが毛細管現象で紙上に広がるのを見て、観者はこれらの傷が、
筆が支持体の上に乗せる顔料とは本質的に異なる、
粒と粒を連絡するパイプであることに気付くだろう。
粒に分割された図像を傷が縢り合わせることで、
瀬戸内の海景は再び連続した世界の姿を取り戻す。
分割と連続が矛盾したまま、一枚の紙の上に収められるのである。
そして傷は世界のなめらかな表層を破り、
その向う側の現実をわずかに覗かせている。




時雨#1〜4
2021
シルクスクリーン、水性インク、紙
1800×580mm each



経歴
1995 岡山県出身
2018 金沢美術工芸大学美術工芸学部油画選考 卒業
2020 京都市立芸術大学大学院
美術研究科絵画専攻 版画 修了

個展
2021 「tide me over」atelierZ (岡山)
2023「水を切って」KUNST ARZT

グループ展ほか
2022「レジデンス作家2人展+」 湯涌創作の森 
金沢市民アートギャラリー(金沢)
2022「測鉛をおろす 中桐聡美/山田真実 二人展」
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
2023「レジデンス作家2人展+」 金沢21世紀美術館(石川)
2023「無限に広がる版画表現」芝田町画廊(大阪)
2023「漁師と芸術家〜波を紡ぎ、営みを織る〜」 
滋賀県立美術館ラボ
2024「第16回 岡山県新進美術家育成I氏賞 選考作品展」 
岡山天神山プラザ



    









for the collection of
NAKAGIRI Satomi's works